メディ女インタビュー

【Akimama】もっと自由に気ままに!アウトドアカルチャー情報サイト

「アウトドア」と聞くとどんなイメージが浮かびますか?専用の道具やウエアがないと無理そう?やってみたいけれどハードルが高そう?果たしてアウトドアは「非日常」要素をわざわざ作らないと実践できないのでしょうか。今回は、アウトドアカルチャーのニュースサイト「Akimama」を立ち上げた福瀧智子(ふくたきともこ)さんにお話しを伺いました。

2018年04月13日更新

滝下 明子

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本気で遊べば遊ぶほど信頼度が高まるアウトドアの世界

ーAkimamaの立ち上げ経緯から教えてください。

福瀧「私を含め約6~7名からなるAkimama編集部は、元々は出版社に勤務していたり、フリーライターという形でアウトドアや登山、スキー関連の雑誌に携わっていました。現在もフリーで関わっているメンバーが複数名います。私もフリーライターとしてそういったジャンルの各社媒体に楽しく10年近く関わってきました。

そんな中で、山や海といったフィールドで拾い集めたおもしろいネタを企画として出版社に提案しても、『媒体の性格に合わない』などの理由から形にできないというジレンマが常にありました。

エイ出版社の女性アウトドア雑誌『ランドネ』は私が発起人です。外部編集長として創刊から数年関わっていましたが、徐々に自分の思う方向性と出版社の意向に違いが生じて制作から離れたという経緯もあり、「自分の自由になるメディアが欲しい」という想いが年を重ねるごとに強まっていました。それが今から約7年前のことです。
 
ただ、紙媒体が右肩下がりの昨今、リスクの大きな雑誌を作るのは得策ではありません。そこで、大学時代の恩師にアウトドアのニュースサイトを立ち上げたいと相談をしたところ、

『(当時山ガールに端を発して火がついていた)アウトドアブームの波に乗って、大手の企業がビジネスで立ち上げてしまう前に、本当にアウトドアへ愛情を注ぎ続けられる人たちで、愛のあるニュースサイトを立ち上げるべきだ』

と強く言われました。

まったく専門外のWebの世界で、マネタイズの勉強など課題もありましたが、一念発起し、フリーランス仲間などに声をかけて勉強会を重ね、2012年に『Akimama』を手弁当でオープン。既存の紙媒体や専門メディアではなかなか表現することが難しい速報性の高いニュースや、さまざまな意見が交錯する談論風発なテーマ、さらには、光が当たりにくい記録や活動、ユニークなトピックなど幅広い分野にスポットをあて、アウトドアカルチャーのおもしろさや、世界観を広く一般の人にも伝えていくことを目的としたサイトとして誕生しました。

『アウトドアカルチャー』というのはアウトドアにまつわる総合的な情報という意味で用いていますが、サイト内のコンテンツでは映画や書籍、イベント、音楽、人物などもカルチャーとして取り上げています。これからアウトドアを始めたいと思っている人には、一番とっつきやすい分野でもあると思います。」

ー「アウトドアカルチャー」の情報発信サイトということですが、具体的にどのような方たちが携わっているのでしょうか?

福瀧「Akimamaのコアメンバーは、登山や海、ウィンタースポーツ、野外フェス、狩猟採集などなど、アウトドアの様々な分野で本格的に活動してきたバックグラウンドを有しています。アウトドアの世界は本気で遊べば遊ぶほど業界での信頼度が高まるというおかしな世界なのですが、その点でメンバーは申し分ありません。各自の活動を通じて、また出版社時代、あるいはフリーライターとしてのつながりから、業界の重鎮やキーパーソーン、アウトドア関連のメーカーとも広く深く通じています。

 現在は、コアメンバーが各自の得意分野を中心に取材執筆を行ない、その他アウトドア業界に深く関わるライターや編集者、カメラマン、さらには野外イベントの制作に関わるイベンターやローカルなフィールドで活躍するガイドたちが、それぞれのフィールドワークにもとづきニュースを発信しています。

みんな個々のフリーランスの仕事が煮詰まったら、息抜きでAkimamaを書いたりもしています。本腰入れて書くどっしり重いネタもあれば、息抜きとして書けるライトな情報もあり、その緩急はAkimamaの居心地のよさだったりします。アウトドアと名のつくものならなんでも扱えるっていいですね(笑)。

 
株式会社ヨンロクニという会社がAkimamaの母体ですが、これはもともと某山岳系雑誌の出版社に勤務していた編集者2名が立ち上げた会社です。その2名はAkimamaや出版業務のほか、アウトドアの知識経験を活かして国内最大の野外ロックフェス「フジロックフェスティバル」を初めとした10以上のフェスの制作運営に長きにわたって尽力していて、Akimama編集部の大半は同時にその活動のチームメンバーでもあります。

株式会社ヨンロクニの社員2名以外は、私を含め全員フリーランスです。フリーランスはそれぞれ個々の仕事を同時進行で行いつつ、日々公開される通常記事はカレンダーを使って当番制に。企業タイアップはクライアントごとに担当を割り振り、ヨンロクニ社員と密に連携しながら進行しています。月2回は定例会議で経過報告も行なっています。

こういった経緯から自分たちで野外イベントの制作運営も行なえるため、最近はアウトドアイベントやワークショップなども開催。画面上の記事だけでなく、読者が集まる場を作るという立体的なアプローチでもアウトドアの楽しさを伝えていきたいと思っています。」

福瀧さんの一日を教えて!

【基本業務】
■記事執筆
■企業タイアップ等のディレクション
■外部ライターの連載の編集担当 など

 ※現在は、出産に伴い仕事をセーブしています。以下は出産前の、とある日のスケジュールです。

  • 9:00
  •  自分のオフィスに出勤(家から自転車で10分)メールの返信や企画書作成、記事執筆、事務作業など

  • 13:00
  •  都内でクライアントとタイアップ企画の打ち合わせ

  • 14:30
  •  次の会議まで時間貸しのシェアオフィスで作業

  • 16:00
  •  Akimama定例会議に出席

  • 19:00
  •  アウトドアメーカー 新製品のレセプションパーティに出席

  • 21:00
  •  業界仲間とサクっと食事。以後帰宅(場合によってはオフィスへ戻り作業)

    雑誌の世界からWebメディアの立ち上げへ

    ー元々紙媒体に携わっていたということですが、今までのキャリアを教えてください。

    福瀧「出身は京都で、大学卒業後に学生時代のめり込んだスノーボードの雑誌を作りたいと上京。「山と渓谷社」へ入社し、そこで編集のいろはを学びました。

    当時「山と渓谷社」の一部社員がアウトドアサポートとして関わっていたフジロックフェスティバルへ手伝いで参加し、知らなかった野外ロックフェスやキャンプ、アウトドアの楽しさに開眼することになります。その後、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスライターになりました。

    当時楽しんでいた登山のほか、シーカヤックやスキンダイビング、バックカントリースノーボード、クライミングなど、たしなむアウトドアの幅も広がり、趣味と雑誌制作の両面からアウトドアの世界全般に深く携わるようになりました。

    32歳で「女性のためのアウトドア雑誌を作りたい」とエイ出版社と『ランドネ』を創刊。
    外部編集長としてしばらく制作の音頭を取っていました。編集仕事の傍ら、夏はフジロックフェスティバルを始め、国内の大小の野外フェスティバルの現場制作スタッフとしても活動。北は北海道、南は宮古島まで10を超える現場をまわりました。

    その後、2012年に「Akimama」をスタート。現在はAkimamaのコアメンバー、雑誌のフリーライター、野外フェス制作スタッフとして年間を通じてアウトドアで活動しています。」

    ーフリーランスになったのはどのような想いからでしょうか?

    福瀧「最後に勤めていた編集プロダクションは、編集の技術を習得するには申し分ない職場でした。しかし、仕事とプライベートの境界が曖昧になっても、どうしても自分の好きなもの・ことを仕事で扱いたいという思いが強くなり、フリーランス転身を決意しました。「登山専門誌」や「スキー雑誌」などひとつの編集部に入れば取り上げられる情報が限られるため、フリーという立場で複数の媒体を跨いで、幅広いアウトドアの遊び方ができる日本の魅力を表現したいと思いました。」

    校了がないWebの世界。楽しさと苦労は?

    ーAkimamaを運営する中で、日々のやりがいや苦労を教えてください。

    福瀧「おもしろいのは、雑誌と比べいったん情報が波に乗って拡散されると爆発的に伝播してく様が手に取るようにわかるところ。日々のアウトドアでの遊びで見つけた何気ないネタが思いの他評判を得て、目に見えて広がっていく様子は、紙に関わっていたころには味わえなかった興奮があります。

    感じるのは、紙媒体は「Close & Only」であるのに対し、WEBは「Open & Shere」という点。

    雑誌は読者が書店で購入し、記事を読み、それ以上に発展することはありませんが、Webは書き手と読み手の距離が非常に近く、反応もダイレクトでオープン。情報を共有しているという実感が非常にありおもしろいです。ライブで情報が動いている感じがとても強いです。

    立ち上げ当時は誰もAkimamaの存在を知らず、都度サイトについて説明を強いられましたが、今では地方の山やプライベートで訪れるスキー場、取材ででかける遠方などで読者に出会う頻度が増え、さらにその方々から記事になる情報をいろいろといただくようになりました。

    登山雑誌、スキー雑誌、自転車雑誌という専門誌ではなく、”何でも扱える”Akimamaだからこそ大小さまざまの良質な、時にマニアックな情報が入ってくるようになりました。

    企業や地方自治体など、雑誌への出広を削ってAkimamaと何かやりたいという声もありがたいことに増えていますが、現在はすべて対応できていないのが現状で、もどかしいばかりです。

    苦労は、やはり雑誌でいう“校了”がなくエンドレスなところ。情報を上げ続けなければいけないという強迫観念に最初はプレッシャーを感じ、かなりやられました。締め切りの曖昧さもダメですね。よほど自分を厳しく律しないと作業がどうしても後手後手になる。雑誌だとこれ以上ずれこむと白紙で本が出るという状況におのずと追い込まれるので、自己管理を問われるのはWebの恐いところだと思っています。」

    ー現在はまだ産後間もないということですが、仕事とプライベートの両立はどうされていますか?

    福瀧「これまでは自分と夫、犬の3人暮らしだったため、仕事に費やす自由な時間が多く、一言返事で仕事を受けていても家庭との両立はどうとでもなりました。

    現在の産休を経て今後育児と平行してどう働いていくかは目下模索中で、逆にみなさんどうされているのか聞きたいくらいです。ただ、自分のメディアがあるので、仲間に相談しつつ、甘えつつ子どもの手が離れるまで一番よいバランスで関わっていきたいと思っています。

    一つ言えるのは、「アウトドア」という遊びがそもそもベースにあるので、今後どんな働き方になっても、子どもとも共有できる分野であることに違いないということ。楽しんで働いているお母さんって子どもにとって悪い存在ではないと思うんですよね。

    運営するイベント会場には連れていきたいし、登山の取材があれば一緒に行ってもいい。
    多少なら、社会見学のつもりで学校を休んだってよいと思っています。そんなふうに子どもを参加させることが許される人間関係や場作りをこれまでフリーランスとしてしてきたと思って
    いますし、きっとどの現場も今後のアウトドア界を担う子どもは手放しでウェルカムですよね。どうやって子どもを楽しく巻き込んで仕事をしていくか、いろいろと考えていきたいと思っています。」

    日本に生まれたことをもっと楽しんでほしい

    ー最後に、Akimamaとして、そして福瀧さん個人としてこれから新たにトライしたいことや目指したいことを教えてください。

    福瀧「まずは、『アウトドア天国である日本の魅力をどう伝えるか』です。

    今は、ひとたびテレビをつければ、不景気、政治不信、生きづらさ……といった、今日本が抱えているネガティブなワードが次々と耳に入ってきますが、少なくともアウトドアで遊んでいる私たちにとって、日本ほど魅力的な国はそうそうありません。

    ハッキリとした四季があり、すばらしい山があり、美しい川があり、きれいな海に囲まれている。南北に縦長であるがために、冬になれば世界のマニアがうらやむ最高の雪が降り、南に下れば熱帯魚が泳ぐサンゴ礁の海が広がる。パスポートも持たずそんなフィールドをわずか数時間で行き来でき、どこも安全で、日本全国食にめぐまれ、いたるところに温泉がわき出て、人は親切で穏やか。

    小さな小さな島国にこんな恵まれた環境が揃っている場所は世界広しと言えどありません。
    まさにアウトドアを楽しむ人にとって奇跡の国といえ、日本に生まれながらにしてなぜ多くの人は自然のなかで遊ばないのか私たちにとっては心の底から疑問です。海外から来た人たちも口を揃えてそう言います。

    手を伸ばせばそんな環境が誰でも手に入るという幸運に気づいていない、あるいは忘れてしまっている日本のみなさんに、どうその喜びを伝えていくかがAkimamaの課題です。命をかけた大冒険でなくとも、日常からほんの少し飛び出して自然に触れるだけで、『日本に生まれてよかった』という、暮らしの根本を覆すような気持ちに誰でもなれるチャンスがあります。ちょっと見る角度や方向を変えるだけで、誰にでも。そういったきっかけになる良質な記事を届けられるメディアを作っていきたいと考えています。

    二つ目は、『子どもとアウトドアの情報配信』です。

    出産を機に、これから子どもの世界に触れていく機会が多くなると思うので、子ども向け(子どものいる両親向け)の信頼できるアウトドア情報を手がけていきたいと思っています。

    そうして、子どもやご両親たちが積極的にアウトドアを楽しんで、日本に生まれたことに喜びを感じてくれれば、発信者としてはそれ以上嬉しいことはありません。アウトドアや自然が生活の一部のように暮らすことができれば、間違いなくその家族は一生楽しんで生きていくことができるはずです。」

    アウトドアをもっと自由に気ままに

    「アウトドア」というと、どこか構えてしまう人が多いかもしれません。しかし、日本には四季があり、豊かな自然も沢山あります。まずは家の外に出てみる。近所の公園からスタートしたっていい。身近な自然に触れることがアウトドアの第一歩なのかもしれません。改めて、今置かれている環境に感謝した取材となりました。

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